レントゲン博士によって、物質を通過する放射線であるX線が発見されて、すでに124年ほどが経ちましたが、X線の発見で医学は大きな進化を遂げました。歯科の分野でも、X線発見から数年後には実用化され、以来治療計画の立案や治療後の経過観察など、あらゆる場面で用いられており、歯科医療において、なくてはならないものとなりました。歯科分野の疾患は、口腔内を医師の視診だけで発見できるのは、ほんの一握りです。痛みが起きずに進行する疾患も珍しくないため、目では見えない部分まで、X線によってしっかりと確認することができるようになったのです。
歯のX線による身体への影響
歯科医院でX線検査を受けるときに、被ばく量を心配する方が多くいらっしゃいます。放射能や被ばくと聞くと、特別なことのように聞こえますが、実は私たちは毎日、放射性物質を浴びながら生活しているのです。テレビや電子レンジなど電子機器からも放射性物質は出ていますし、飛行機に乗ることでも放射性物質を浴びているのです。例えば、東京~ニューヨーク間を飛行機で往復すると、およそ0.19ミリシーベルト(190マイクロシーベルト)の放射性物質を浴びることになりますが、一方、歯科のデンタルX線は1回で0.001~0.008ミリシーベルト(1~8マイクロシーベルト)なので、年に数回X線を撮っても大きな被害を受けることはありません。また、取り込まれた放射性物質は、新陳代謝によってある程度排出されるため、日常生活を送る上では気にする必要はないのです。
歯のX線の種類と被ばく量
デンタルX線
フィルムをロの中に入れて撮影するので「ロ内法」とも呼ばれる最も一般的なX線です。小さな歯の中に隠れた虫歯や、細くて複雑に分岐した根管や、歯槽骨の減り具合や骨密度、歯茎の奥の歯石まで細かい情報を得ることができます。症状によっては一度に数枚撮ることもあります。デンタルレントゲンは1枚で0.001~0.004ミリシーベルト(1〜4マイクロシーベルト)です。
パノラマX線
パノラマX線は、歯の一部分ではなく、口全体を一枚の写真に映し出すX線です。歯や顎の骨の状態までを総合的に把握するために使用され、インプラントや歯周病、親知らずの抜歯などの治療の際に使われます。撮影装置がぐるっと頭の周りを回って撮影します。歯科用パノラマX線は、1枚で0.02ミリシーベルト(20マイクロシーベルト)です。
セファログラム
セファログラムは頭部X線規格写真とも呼ばれる、一定の規格に基いて撮影された頭部のX線写真です。矯正治療をおこなう場合に必要となりますが、その他の歯科治療ではあまり使われません。治療前や治療後の比較が容易で、成長発育を予測することができます。
セファログラムは1回で0.003~0.005ミリシーベルト(3〜5マイクロシーベルト)です。
歯科用CT
平面ではなく立体的に撮影できるのが歯科用CTです。立体画像や、あらゆる角度からの断層写真を撮ることができます。そのため歯科用CTは、歯や歯槽骨、顎の骨格や神経、血管、腫瘍などの形や位置などを、より正確に知ることができます。歯科用CTは医療用のCTのように全体を撮影する必要はなく、歯や顎の部分だけなので被曝量も微量です。
歯科用CTは1回で0.1ミリシーベルト(100マイクロシーベルト)です。
X線によって分かる情報
歯根の様子
X線は、歯根(歯の根)の様子を知るために欠かせません。歯根が炎症を起こしている場合は、X線によって腫れている部分を確認したり、根管治療などの際、薬がきちんと注入できているかなどを確認します。外からは確認できない歯の内部の治療には、X線は欠かせないのです。
虫歯の進行状況の確認
見た目は小さな虫歯だと思っていても、奥は虫歯が悪化しているといった場合が子供の歯に多くみられます。そのような場合でも治療前にX線を撮ることで、虫歯の状態や進行具合を確認することができます。
顎の骨の状態の確認
歯は歯茎だけでなく、骨にも支えられていますが、歯周病が進むと歯槽骨(顎の骨)が溶けてしまうことがあります。この場合も外からは分からないため、まずはX線で骨の様子を確認してから治療方針を立てます。
詰め物や被せ物の確認
詰め物や被せ物は、時間が経ってしまうと削れたり壊れたりしてしまいます。そのため、歯と詰め物や被せ物の隙間から細菌が侵入し、歯根部分が炎症を起こしたり、虫歯を悪化させてしまうこともあります。そのため、異常を感じなくても数年に一度、詰め物や被せ物をした歯を点検するために、大分県のかかりつけの歯科医院で歯のクリーニングをおこなうことをお勧めいたします。X線で確認することで、詰め物や被せ物の状態を把握することができるのです。