睡眠には身体を休めるとともに、自律神経系や免疫機能、内分泌機能などを回復する役割があります。しかし、睡眠が妨げられてしまい、これらの役割が十分に機能しなくなることで、不眠症や過眠症、睡眠覚醒リズム障害、睡眠随伴症(睡眠の経過中に起る心身機能の異常)などといった「睡眠障害」が起こってしまいます。この睡眠障害は、噛み合わせが原因で引き起こされている場合もあるのです。
噛み合わせが悪くなる原因
不正咬合(悪い歯並び)
歯がデコボコしている「叢生」や、前歯が大きく傾いて生えている「出っ歯」のような悪い歯並びは、噛み合わせを悪くしてしまう場合があります。不正咬合は、幼い頃の指しゃぶりの癖や、舌で歯を押したり歯と歯の間に舌をだすといった舌癖、頬つえなどの悪い癖が原因である場合や、生まれつき顎が小さく、歯を並べるための十分なスペースが足りなくなることで歯列が乱れてしまうといった、遺伝が原因であることが多いです。
歯ぎしりや食いしばり
就寝中に歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、歯が擦り減ったり欠けたりすることで噛み合わせが悪くなることがあります。また、起きているときにも強いストレスや緊張を感じると、無意識に歯を食いしばる癖がある場合も、噛み合わせが悪くなる要因となります。さらに、歯ぎしりや食いしばりによって、顔周辺や首の筋肉が過緊張を起こしてしまうため、頭痛や肩こりの原因にもなる場合もあります。
・虫歯を放置したり、歯が抜けたまま放置する
虫歯になっても治療せずに放置したり、治療を途中で中断してしまった場合も噛み合わせが悪くなることが多いです。また、歯が抜けたまま放置した場合も、歯が空いたスペースに徐々に移動してしまうため、歯並びや噛み合わせが悪くなってしまいます。
睡眠時ブラキシズムに注意しましょう
就寝中の歯ぎしりや食いしばりの習癖のことを「睡眠時ブラキシズム」といい、眠っている時に無意識に歯ぎしりや食いしばりをしてしまうので、起きている時よりも抑制が効かず、歯や顎により大きな負担がかかってしまい、歯の擦り減り、知覚過敏、歯や歯根の破折、補綴物の破損、顎関節症などといった、多くのトラブルのリスクファクターとなる場合があります。また、就寝時に歯ぎしりや食いしばりを無意識に毎晩繰り返してしまうことで熟睡ができず、不眠などの睡眠障害の原因になる場合もあります。睡眠時ブラキシズムは、レム睡眠(浅い眠り)の時に起こりやすいことから、起きている間に睡眠の質を高める習慣をつけるのが効果的です。また、就寝時に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」の方も、呼吸が止まり体の酸素量が低下していることで、一次的に脳が活性化されて睡眠が浅くなり、歯ぎしりをしている場合があります。そのため、睡眠時ブラキシズムを起こしている場合は、大分県の歯科医院で見てもらうようにしましょう。
歯ぎしりの種類
グラインディング
グラインディングは、上下の歯を擦り合わせる歯ぎしりのことをいい、歯ぎしりをする方の多くは、このタイプの歯ぎしりです。ギリギリと歯が擦り合う音がするのが特徴で、無意識におこなっている口腔習癖です。歯や顎、顎関節などに大きな負担がかかるため、歯や顎に悪影響を及ぼす場合があります。
クレンチング
クレンチングは、強いストレスや緊張などがある場合に、上下の歯を強く噛みしめる歯ぎしりのことをいいます。クレンチングは無意識に歯を食いしばっているため、音がせず知らない間に歯が削れたり擦り減ってしまうだけでなく、頭痛や肩こり、顎周辺の痛みを感じることがあります。
タッピング
タッピングは、上下の歯を合わせてカチカチと音を鳴らす歯ぎしりのことをいいます。グラインディングやクレンチングと比べて、顎や歯などへの影響は少ないのですが、ストレスや噛み合わせなどの原因がある場合は改善が必要です。
歯ぎしりや食いしばりの改善方法
マウスピースによる治療
就寝時に歯列全体を覆うスプリント(マウスピース)を装着することで、歯ぎしりや食いしばりが改善します。スプリントを装着している状態で歯ぎしりや食いしばりをしても、歯や歯茎に直接的な強い負荷がかからなくなるので、歯が削れたり擦り減るのを防いだり、顎の関節にかかる力も軽減することから顎関節症の予防にも効果的です。スプリントは市販でも購入できますが、歯科医院で患者さんの歯や顎の大きさに合わせて作製した方が噛み合わせなどに影響がありませんし、保険も適用されるためお勧めです。
歯列矯正治療
歯並びや噛み合わせが悪いことによって、歯ぎしりや食いしばりが起きている場合、矯正治療によって歯並びや噛み合わせを正しい位置に整えることで改善する場合があります。矯正治療には、主にブラケットという金属製の装置を歯の表面に装着してワイヤーを通し、力を加えながら引っ張ることで歯を動かしていく「ブラケット矯正」と、透明なマウスピース型の装置を歯に装着して、定期的に動いた歯に合わせて新しいものと交換していくことで徐々に歯を整えていく「マウスピース矯正」があります。
リマインダー法
リマインダー法(認知行動療法)とは、起きているときにご自身で歯ぎしりや食いしばりをしているのかを認識し、意識的に止めるようにする方法です。歯ぎしりと食いしばりを止めるような習慣を作り、徐々に改善させていきます。
薬物療法
薬物療法は、歯ぎしりや食いしばりによって歯や顎の痛みがひどい場合におこなう療法で、非ステロイド性消炎鎮痛剤や一部の降圧剤、漢方薬などを使用します。