矯正治療の方法にはいくつかの種類がありますが、大きく分けると、ブラケットという装置を歯の表側もしくは裏側に装着し、ワイヤーを通して引っ張ることで歯を動かしていくブラケット矯正と、透明のマウスピース型の装置を歯に装着して、定期的に動いた歯に合わせて新しいマウスピースと交換していくことで歯を動かすマウスピース矯正治療があります。矯正治療は悪い歯並びや噛み合わせを、正しい位置に整えることができる治療法ですが、表側に装置が見えるブラケット矯正の場合、どうしても器具が目立ってしまうため、他人に矯正をしていることが知られてしまったり、人前に出る仕事の方などは仕事に支障が出てしまうことも少なくありません。そういったことから、近年では目立たない矯正治療を選択する方が多くなっています。目立たない矯正治療とはどのような治療方法なのでしょうか。ご説明いたします。
裏側矯正(舌側矯正)
裏側矯正は、ブラケットを歯の裏側に装着することで前から矯正器具が見えないブラケット矯正治療の一つです。以前に比べて装置の改良が進み、ブラケットのサイズも小さく薄型となっており、突起部分も少なくなっているため、舌や歯茎にあたって炎症を起こしてしまうということも減ってきています。さらに、ブラケットを繋ぐワイヤーの性能も向上していることから、表側矯正とほとんど変わらない効果があります。
裏側矯正のメリット
矯正器具が見えない
最も大きなメリットとして、歯の表側から矯正器具が見えないので、他人に気づかれずに矯正治療をすることができます。表側矯正のように、食べ物が装置に挟まったり、絡みつく心配をする必要も減るため、外食の際に気にすることなく食事を楽しむことができます。
歯へのダメージが少ない
歯の表面はエナメル質で覆われており、そこにブラケットを接着しワイヤーで締めることで、ブラケットが歯に接着している部位のエナメル質が減りやすくなってしまいます。裏側矯正の場合は、歯の裏側にブラケットを接着するのですが、歯の裏側のエナメル質は表側の3倍の厚さがあるため、同様のダメージがあっても影響が少ないのです。また、矯正治療中の虫歯のリスクを下げることができるということもメリットです。表側矯正の場合、どうしてもブラケットやワイヤーが邪魔になり、歯磨きがしづらくなり、磨き残しが増えてしまいます。それによって虫歯になりやすくなりがちです。しかし裏側矯正の場合は、歯磨きがしづらくても、常に唾液が循環しているため乾燥しにくく、さらに唾液には殺菌作用や自浄作用があるため、口腔内の細菌の増殖を抑えたり、虫歯菌を洗い流す働きをします。この唾液が常に循環している歯の裏側は、表側よりも虫歯になりにくいのです。
舌癖防止ができる
無意識に舌で前歯を押す癖がある方も、歯の裏側に矯正器具があることで舌があたると違和感をもち、舌で歯を押すことがなくなります。また、矯正中に舌で押さないことに慣れることで、矯正後も舌で歯を押す癖がなくなります。
裏側矯正のデメリット
食事や歯磨きがしづらい
食べ物が矯正器具に絡まってしまい、食事がしづらいと感じる場合も多いです。また歯磨きの際、通常でも歯の裏側は磨きづらいのに、矯正装置があることで余計に磨きにくくなります。そのため、食べカスなどが歯の裏側に残りやすくなってしまいます。
矯正器具が舌にあたる
裏側矯正の場合、舌が器具に当たってしまい違和感を持つことがあります。時間が立てば慣れていきますが、それまでは舌が当たりやすいため、口内炎などができてしまう場合もあります。
発音がしづらい
話す際に舌が矯正器具に当たらないようにするため、サ行・タ行・ラ行などの特定の発音がしづらくなるため、言葉が不明瞭になり、舌足らずのような話し方になる傾向があります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正治療にはいくつかの種類がありますが、中でもインビザラインは、3D光学スキャナーなどの高度な機器や技術によって、新しい歯の治療システムを展開しており、口腔内スキャナーによって1回の歯型取りで全てのマウスピースを製作できるため、通院も2~3ヶ月に一度と少なくてすみます。また、透明なマウスピースを歯にフィットさせるため、目立たない矯正治療方法なのです。
マウスピース矯正のメリット
自分で取り外せる
マウスピース矯正の場合、マウスピースをご自身で取り外しができるため、食事の際や歯磨きの際に取り外すことで普段と同じように食事や歯磨きをすることができます。そのため、食べ物の制限がなく食事を楽しめたり、歯磨きの際に装置の部分が磨きにくいといったこともありません。
透明で目立たない
マウスピースが薄く透明に近い医療用プラスチック製のため、装着していても目立ちません。そのため、他人に矯正をしていることを気づかれずに治療をすることができます。
矯正装置による痛みが少ない
矯正治療は歯に対して力を加えて歯を動かしていくため、ある程度の痛みや違和感がありますが、マウスピース矯正の場合は、1枚のマウスピースを装着して動かすことができる歯の移動量が決まっているため、過度に力が加わることがないので痛みも少ないのです。
金属アレルギーの心配がない
マウスピースはプラスチック製のため、金属アレルギーの人にも心配がありません。また、薄く滑らかなので歯茎までフィットすることで唇や口の中の粘膜を傷つける心配もありません。
マウスピース矯正のデメリット
症例によっては治療期間が少し長くなる
マウスピース矯正は最低でも1日20時間以上の装着が必要で、10日〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換します。インビザラインの場合は、1枚のマウスピースで歯を動かす限界が0.25mmと決まっています。そのため、症状によっては治療期間にかなり個人差があります。一般的には1年~2年ですが、長いと2年以上かかる場合があります。
治療計画通りに進まない可能性がある
マウスピース矯正は自分で取り外しができるため、外している時間が長くなってしまうと、思うように歯が動きません。そのためマウスピースを長い時間取り外していたり、装着時間を守らないと計画通りに治療ができないだけでなく、治療自体が失敗する場合もあります。