ドライマウスとは
私たちの口は、食べ物や空気の入り口で、常に外からの細菌やウイルスなどにさらされている箇所でもあります。その際、口腔内は唾液によって細菌やウイルスから守られています。さらに、唾液は食べ物を飲み込みやすくしたり、話すときにしっかりとした発音ができるようサポートしてくれたりもしています。しかし、何らかの原因で唾液の分泌量が減ってしまうことで、ドライマウス(口腔乾燥症)と呼ばれる口腔内が乾燥してしまう症状が起こることがあります。
ドライマウスは病気ではありませんが、口や喉の渇きといった自覚症状などがあります。男性よりも女性に多く、以前は50~70歳代の中高年の女性に多く見られるといわれていましたが、近年では30~40歳代の女性がドライマウスの自覚症状を訴えることが増えてきています。その原因として、不規則な生活習慣や過度のストレスが挙げられています。ドライマウスの自覚症状がある方は日本国内でも約800万人おり、自覚症状はないけれど、潜在的にドライマウスである方は約3000万人もいると推定されており、日本人口の4人に1人が潜在的なドライマウスの患者さんであるという計算になるのです。
ドライマウスの主な原因
加齢による筋力の低下
加齢によって口周りの筋肉や歯が衰えてくると、咀嚼力が低下するため、唾液の分泌量が少なくなり、ドライマウスを引き起こすことがあります。また、全身の筋肉も衰えていくため、姿勢が徐々に猫背になり顎が前に出てしまうことで、鼻呼吸ではなく自然に口呼吸になってしまい常に口が開いた状態になるため、ドライマウスになりやすくなります。
過度の緊張やストレス
精神的に緊張したときや、強いストレスを感じた場合、唾液が出にくくなります。その場合、緊張やストレスから解消されれば、唾液の分泌量も正常に戻るのですが、過度の緊張やストレス状態が続いてしまうと、口の渇きが慢性化してしまいドライマウスになってしまうことがあります。
食生活
食べ物をしっかり噛むことで、顎や舌の筋肉が動くので唾液の分泌量が多くなります。しかし近年の食生活では、柔らかく食べやすい食べ物を好む傾向にあるため、顎や舌の筋肉が衰えてしまい、唾液の分泌量が少なくなるため、ドライマウスになりやすくなります。
薬の副作用
花粉症の治療薬として使われる抗ヒスタミン薬や鎮痛薬、抗うつ薬や向精神薬、血圧を下げる降圧薬などの薬の副作用によって、ドライマウスが起きることがあります。高齢者の方にドライマウスが多く見られるのは、薬を多く服用していることの副作用が原因と考えられます。
ドライマウスを引き起こす疾患
ドライマウスを引き起こす疾患には、糖を含んだ尿が大量に排出されるため、脱水状態になりやすい糖尿病や、ホルモンの異常やバランスの崩れによって起こる更年期障害、膠原病のひとつで主に涙腺や唾液腺などの外分泌腺に炎症が生じ、涙や唾液などが出にくくなるシェーグレン症候群があります。シェーグレン症候群は女性に多い病気で、日本での患者数は20~30万人ともいわれています。
ドライマウスの予防や対処法
食べ物をよく噛んで食べる
ドライマウスの方は、口腔内が乾燥しているため、食べ物が飲み込みづらいことから、軟らかくて噛まなくても食べられる物を好む傾向にあります。しかし、軟らかい物ばかり食べていると、唾液の分泌量がますます減ってしまうので悪循環です。唾液の分泌量を増やすためにも、食べ物をゆっくりよく噛んで食べることが大切なのです。
唾液分泌を促すものを食べる
レモンやミカンなどの柑橘類や、梅干しなどを食べることで唾液の分泌量を促すことができます。また、アメやガムを食べたり噛んだりすることも、口周りの筋肉が鍛えられるため、唾液の分泌を促すことに繋がります。
乾燥しないようにする
マスクやうがい薬、保湿剤などの保湿ケア製品を使用して口腔内の乾燥を予防することも大切です。また、外出する際はペットボトルを持ち歩くようにして、常に口の中を潤すように気を付けましょう。その際は、糖分の入った飲み物は虫歯の原因になるので、お茶かミネラルウォーターなどが良いです。さらに乾燥した部屋にいることで口腔内が乾いてしまうので、冷暖房の効かせすぎに注意をすると共に、加湿器などを使って部屋を乾燥から防ぐようにしましょう。
唾液の働き
唾液には、食べカスや歯垢(プラーク)などの細菌を洗い流す自浄作用や、細菌の繁殖を防ぐ殺菌作用の他にも、免疫力を高める免疫作用や、唾液に含まれるアミラーゼによる消化作用、酸性に偏った口腔内を中性に戻す作用や、歯の再石灰化作用など、様々な働きをしています。しかし唾液の分泌量が減ってしまうことで、その働きも弱まってしまいます。そのため、食べ物をよく噛んで食べるためにも、歯並びや噛み合わせなどが整った口腔内の環境作りが重要となります。唾液の分泌を促すことが、口腔内や体の健康にも繋がるのです。
ドライマウスの自覚症状がある方は、ご自身で判断せずに、一度大分県のかかりつけの歯科医院で相談してください。